国際関係論

Viewpoint --「中国式発展モデル」をめぐる熱い議論

Sophian(ソフィアン) 2014. 3. 16. 15:56

 

『中国式モデルはない』

 
Chosun online | 朝鮮日報

 

中国式発展モデル」をめぐる熱い議論(上)

 

西欧の一部の学者は「実態あり」

民主化なき成長例、開発途上諸国にも大きな魅力

 

中国系学者は「実態なし」 『中国式モデルはない』

中国の成長は改革開放のおかげ、規制が続けば危機も

 

 

 

 「北京コンセンサス」中国特有の発展モデル)は存在するのか。論争はますます熱くなっている。

 

 興味深いのは、欧米の学界でこのモデルに注目する人々が増えている中で、米国で活動する中国系の学者は反対の立場にあるケースが多いということ。論争が国際的に関心を集めるのは、いわゆる「開発独裁」の正当化と関係しているからだ。これまで、西欧における主な発展論は、経済成長は必然的に民主化を生む、あるいは民主化を必要とするという論理だった。これに対し中国モデルは、経済成長にとって民主化は必須条件ではなく、むしろ権威主義が成長にとってより効率的だということを強く示している。今年、スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラム(WEF)で熱く議論されたテーマの一つも「北京コンセンサス」だった。

 

 

 

ステファン・ハルパーの『北京コンセンサス』(写真左)と、陳志武の『中国式モデルはない』韓国語版の表紙

 

■北京コンセンサスはある

 

 

 「北京コンセンサス」とは、2004年6月に、米誌『タイム』の国際ニュース編集長だったジョシュア・クーパー・ラモ氏が、英国のフォーリン・ポリシー・センターに提出した論文のタイトルとして登場した。ラモ氏は、政治の自由化なしに市場経済を指向する中国の発展モデルを「北京コンセンサス」と名付け、西欧における経済発展の通念(ワシントン・コンセンサス)と対比させた。

 

 論争が過熱したのは、08年の米国発金融危機、いわゆる「リーマン・ショック」以降のこと。昨年4月、ケンブリッジ大国際研究所のステファン・ハルパー上級研究員は、同じタイトルの本で「中国式の権威主義的資本主義は、西側が期待するような自由と開放の方向に進むことはなく、西欧の自由民主主義と競争する構図を形成し、開発途上諸国でも可能なモデルとしてその地位を確立するだろう」との見通しを示した。同書には「重要な洞察だ」との評価が相次いだ。

 

 米国のヘンリー・キッシンジャー元国務長官は「中国の市場-権威主義的モデルが、今後西欧の体制に対抗し、開発途上国にとって成長・安定のモデルとして人気を集めるという“思想戦”をうまく指摘した」と評した。さらに、1989年に『歴史の終わり』と題する論文で自由民主主義の勝利を語っていたフランシス・フクヤマ(現在はジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院〈SAIS〉教授)までもが、今年初めに英紙「ファイナンシャル・タイムズ」に寄稿した『米国の民主主義が中国に教えられることは特にない』(原題『Democracy in America has less than ever to teach China』)と題する論説文の一文で「中国モデルは、ロシア・イラン・シンガポールのような権威主義とは別種(sui generis)」と評価した。

 

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
 
 
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『中国式モデルはない』

 

 

「中国式発展モデル」をめぐる熱い議論(下)

 

 

■北京コンセンサスはない

 

 

 これに対しイェール大の陳志武教授は、今週韓国で翻訳出版された著書『中国式モデルはない』(メディチ社)で「北京コンセンサスは存在しない」と断言した。09年に執筆された同書の中で陳教授は、中国の成長は、78年に始まった国有企業の民営化と世界経済への編入による輸出のおかげだと分析した。陳教授は、中国が発展を持続させるためには、自由・人権・民主という普遍的価値を重視する「小さな政府」を指向しなければならず、今のような国家主導に固執していては、4-5年以内に深刻な危機に直面するだろうと警告した。さらに陳教授は「金融が国富の王道」という米国モデルを手本にしなければならないとまで言い切った。

 

 マサチューセッツ工科大経営大学院のファン・ヤソン教授も、米国の学術誌『アジア・ポリシー』1月号に寄稿した論文『北京コンセンサスの再検討』(原題『Rethinking the Beijing Consensus』)の中で「中国国民の生活指標を分析した結果、市場中心の経済改革や穏健な政治改革を推進した時期が最も良いことが分かった。持続的な成長のためには、規制緩和に向かって歩んでいかなければならない」と注文を付けた。

 

 ボストン大のピーター・バーガー教授は、これまでの論争をまとめる論文を米国の時事雑誌『アメリカン・インタレスト』3-4月号に寄稿した。バーガー教授は『自由コンセンサス』(原題『The Freedom Consensus』)と題する論文で「中国の発展モデルがユニークなのは明らかだ。中国の指導部が長期的な成長戦略にこだわり、海外の投資家たちに信頼を植え付けていることが、安定的なスピード成長につながっている」と分析した。しかし、バーガー教授は同時に「権威主義そのものが経済成長の必要条件ではないということは、同じくスピード成長を遂げた大国で民主国家でもあるインド・ブラジル・南アフリカ共和国の例が示している。北京コンセンサスも、長期的には自由コンセンサスに集約されていくだろう」との見方も示した。

 

 

全炳根(チョン・ビョングン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
 

  

 

2011/03/24 11:11

カテゴリ: 政治も  > 政局    フォルダ: 国際関係論